１５０

「こいつは反骨の相があるので今すぐ殺すべきです」

…………大人になっても、これは変わらないのか

──────

「えー、また遊べないの？」

「ごめん……」

「もういいよ、別のやつと遊んでくる」

幼少時代から、親の教育方針でたくさんのことを学ばせてくれた、馬術に書道、学術もしたおかげかその方面で苦労したことはなかった。
代償として、それを披露することの出来る友というものに、どうしても恵まれなかった。

まわりの友達はほかの皆と楽しそうに遊んでいる、自分は本当はこんなことやりたくもない、子供なんだから、友達と遊びたい。
だが親は「今遊んでる相手なんてどうせいなくなる、お前は未来に生きなさい、大人になったら、ありがたみがわかるから」と、俺の心情を理解してはくれなかった。

学問などに関しては、確かに親の言うとおり、確かに有り難かった、結果として今の生活に満足しているが、それは必要なことだったのだろう。
だが、時折来る虚しさに涙を流すことが、時間が経つにつれて増えていった。

「…………孤独とは、こうも辛いものなのか……」

劉備殿の国へ入ることになったときの、あいつの言葉は今でも突き刺さっている。
自分の忠義を貫ける人に出会えたと、そう思った矢先の事だった。

「こいつ頭蓋骨が後ろにずれてる、だからこいつは裏切る、私がいうから間違いない」

頭がおかしいのは俺じゃなくてこいつだろ

何が辛いかって、この頭クルクルパーが下手に位が高いせいで俺としてもやりづらかったわけで

マッスル大徳に呼ばれてた時もコネかどうかは知らんが趙雲殿の娘を呼ぶことが多くなり、結局また俺の居場所はなくなった。
別に趙氏に文句言ってるわけじゃねぇ、ただ、虚しかった。

いつの間にか、二次元に夢中になっていた
二次元は、離れない
二次元は、嘘をつかない
二次元は、俺を孤独にさせない

王異さんがアイドル始めたときからずっと応援してた、この人はきっと人気になれる、と

それでも、心の隙間が満たされることはなかった。
酒を飲んでみた、俺にはあわなかった
王異さんのライヴにいった、楽しかった。

「魔王軍の騎馬募集？」

そんな自堕落な生活をしていたときに、ふと見つけた募集記事
することもなく、どうせならと受けてみることにした。

「よろしく」

このでかいおっさんの迫力に押されそうになったが、なんとか正気でいようと

「……よろしくお願いいたします」

「ふーん、騎馬募集なんだけどコストは？」

「１.５コストです」

「………応募した理由は？」

理由？
しまった、考えてなかった、仕方ない、適当に理由を並べるか

「…………魔王軍に入ることで」

「待て」

「？」

「御託はいい、本音で話せ」

「……なんとなく」

「ふっ、本音だな」

「…………あ」

「どした」

「……本音で、話すんですよね」

「当然だ」

「…………本当の、仲間というものが欲しくて」

「……続けろ」

そこからは、何を話したかは覚えてない
ただ、初めて会ったこのでかいおっさんに全てを話した、頭蓋骨が後ろにずれてるだけで殺されそうになったこと、コミュニケーションがとれないこと、話せば話すほど涙が溢れていた、今思い出せばあんな面接は最初で最後だろう

全部話したあとに、でかいおっさんはにたりと笑った

「面白いやつだな、採用する」

「早速でわりーが出陣するぞ」

「……よろしくたのむ」

「よろしくー」

「おう、よろしく頼むぜぃ」

「あぁ……」

変な帽子かぶってる女の子、象を飼い慣らしている男
……二人とも変人だ、間違いない
ただ、俺もこういうときなに話せばいいかわからない、二人ともつまんなさそうなやつとか思ってるのだろうか

まずは、目の前の戦に取り組もう、よくわからない自信が、俺にはあった。

────────

まあ、このあとどうなったかというと、お察しの通り

「遊びにいこうよー！」

「おーい、暇なんだろー？」

俺にも、友達というものが出来ました。

１５０ページ目に、俺の話を乗せるのはどうかと思ったが、順番らしい、それなら書くことにしよう、昔の俺の話だ

俺の名は魏延、魔王や友達に感謝の意をしめしつつ、この白紙の本を別のやつに渡すことにしよう。

更新日時：2018/03/20 20:53
（作成日時：2018/03/20 20:53）

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