時は215年、荊州・益陽
呉の大都督・魯粛は関羽との会談、いわゆる「単刀会」で荊州3郡の返還に成功する。
その会談直後、魯粛は倒れ床に伏す。
そして、副都督・呂蒙に最期の言葉を掛ける。
魯粛 (呂蒙)子明よ、関羽は長沙など3郡を返す事に
同意したぞ。
なれば、この機に乗じて荊州に精鋭部隊を
潜ませるのも手かもしれぬ。
そなたは内心、かように考えているのだろう。
呂蒙 大都督、ご明察です。
魯粛 だか言っておく。
最初は、少数の文官だけを赴任させるのだ。
なぜなら、関羽は呉の動きを注視するはずだ。
だか月日が流れば、関羽は気を緩めるだろう。
その時に、(周瑜)公謹の遺志を実現できるぞ。
(中略)曹操と劉備との直接対決はもうじき
迫っている。
子明よ、我が呉は今後どうすれば良い?
呂蒙 私なら劉備と組み、曹操に対抗します。
魯粛 半分だけ正しい。
呂蒙 間違いの半分とは?
魯粛 よいか。
劉備が弱く曹操が強い時は、劉備が友で
曹操が敵だ。
劉備と組み曹操に対抗せよ。
だが逆に劉備が強く曹操が弱い時は劉備が
敵で曹操が友だ。
曹操と組み劉備に対抗せよ。
そうすることで、我が江東は常に勝者で
あり続ける。
この言葉を掛けた後、魯粛は孫権に書状を書き記そうと筆を持つも、敢え無く生き途絶えた。
【解説】
史実では魯粛の没年は217年ですが、本作品は215年の単刀会直後に亡くなったという設定になっております。
その事も踏まえつつ、ポイントを3つに絞りました。
1. 憔悴しきった魯粛
本作品の特徴として主要人物の最期のシーンは、髪が白髪となります。
諸葛亮、司馬懿に至っては、地毛では到底不可能と言えるほど綺麗な長髪の白髪になります。
病死でない関羽に至っても、自刃する最期のシーンだけ白髪になります。
しかし、魯粛役の霍青(フォ・チン)氏はストイックな性格で、重病で憔悴しきった魯粛を演じる為、撮影3日前から断食し、更に1日20キロのランニングをした身体での撮影に入っております。
このように、頬がやせ細っているのが見えるでしょう。
2. 当時の情勢
赤壁の戦い開戦前、中華南部に当たる揚州、荊州、益州のうち、荊州の劉表の後を継いだ劉琮は曹操に降伏。
そして、益州の劉璋までも曹操に兵士を提供するほど、曹操もしくは親曹操の勢力下の中に有った。
コーエー三国志で赤壁の戦いのシナリオからプレイすると、当時の曹操の強さがわかるでしょう。
そこから、わずか6年後の214年、反曹操の孫・劉連合軍は荊州の中南部と益州の中枢部(北部)を征圧するまでに塗り替わったのです。
これも、魯粛・諸葛亮主導の「天下三分の計」が功を奏したのでしょう。
一方、217年の孫権と劉備の勢力情勢では、劉備が荊州の南西部と益州まで勢力を拡大。
それに対し、孫権は割譲した荊州の南東部を有したものの、曹操と4回も合戦した合肥および濡須口の戦いでは、大きな戦果を遂げる事が出来なかった。
つまり、孫劉同盟は、孫権にとって旨みの少ないものとなっていたのです。
そういう訳で、孫権は、今回の名言の後半赤文字で記されている魯粛の遺言を従うかのように、217年の第二次濡須口の戦いの後、曹操に「降伏」を申し入れ。
そして、呂蒙と陸遜は、今回の名言の前半に記されているように、プライド高い関羽をおだてて油断を誘いながら綿密な計画を講じて、荊州奪還を治めたのです。
3. もし魯粛が存命なら
ここからは、個人的な見解になります。
219年、劉備が漢中を征圧した頃、もし魯粛が存命していたらどうなっていたか。
存命していたら、魯粛は再度、荊州の引き渡しを申し入れるでしょう。
劉備陣営は、荊州三郡を引き渡した215年の単刀会では、曹操が漢中を征圧した事で「止む無し」の判断だったにしても、ここでは簡単に応じられないでしょう。
そうすると、魯粛と諸葛亮の事実上のトップ会談が実現してたでしょうね。
また、魯粛が魏と組むような頃まで存命していたら、大戦シリーズの計略でも呉と蜀限定の連合号令でなく、単純に二色限定の連合号令になっていたでしょうね。
それだったら、効果時間長めでそれぞれの勢力コストが均衡なら強くて、偏っていたら弱い計略が良いかなー
もっとも、魯粛が女性武将なら、舞いでも良いけど。
以上となります。
次回は、新カードに良いネタの無い限り、曹植についてになります。
曹植についても、歴史に関心が無い人でも関心を抱く知識が有りますのでお楽しみに!
最後の言でいかに魯粛が三国の均衡を保つことに重点を置いていたのかがわかりますね。
俳優さんの役作りの話を聞くたびに尊敬の念を抱きます。
>おかか容疑者さん
コーエー三国志シリーズで、孫権の紹介文の一節にある「巧みなバランス感覚を備わった外交手腕」というのは、魯粛から叩き込まれたと言えるでしょう。
そして、俳優さん達は役作りの為に、数多くの労力を掛けている事を我々は忘れてはいけませんね。