200回投稿記念シリーズ
第三回。
最終回は番外編となります。
たまに考える大戦の疑問があるので、
膨らませて小説風に書いてみました。
※この小説はフィクションです。
実在の人物や団体などとは関係ありません。
この手の創作物が苦手な方はブラウザバックしてください。
「……まったくご苦労なこった」
眼前のモニターで狂ったようにくるくると回る騎兵を眺めながら、彼は低い声で
つぶやいた。
外は暗く、雨が降っている。
雨宿りのためにここへ来たのか、大戦が目的で来たのか。もう覚えていない。
明滅する頭上の蛍光灯。薄暗いゲーセンの店内。
妙に自販機の音がゲームのBGMよりもはっきり聞こえる。
時折、空調の音なのか耳障りな声のように似た音が聞こえる。
おまけにクーラーからは生ぬるい風。
蒸し暑い。
時計がないため時間もわからない。
彼はイライラする。
とにかく集中ができない。
そんな彼の事情などお構いなしにモニターの中で延々と回り続ける騎兵。
しかし。
「器用な奴だな……」
5枚の騎馬単。その部隊をすべて重ねて一枚のカードのように見せている。
君主名はバグったような記号の羅列。
S県。店名は……。何処かのショッピングモール内にあるような名前だ。
うんざりしながら彼は席を立つ。
試合は残り数カウント残っていたが無視
煙草に火をつける。
店内にいるのは彼一人。
今どき珍しく灰皿がある。店内での喫煙OKらしい。
缶コーヒーを買うと席へと戻る。
モニターに浮かぶ敗北の文字を見ながらコインを投入。
すぐにマッチングが決まった。
だが君主名を見て吐き捨てるように怒鳴っていた。
「またコイツか!」
29連勝。
数字が気になる。それでも試合を捨てずに向き合おうとするが、
次の瞬間……
彼は台を叩いていた。
酷いラグだ。
画面がフリーズしたかのように、しかしよく見ると兵士たちは動いている。
その兵士たちがもがいてるような苦しそうにも見えた。
一時的に止まり、止まったと思うと動き出す。
敵がこちらの城へ。甲高い耳障りな警告音。
彼はイライラする。
迎撃が取れず相手の攻城ゲージが表示される。
こちらの槍兵は動いている。動いていない。いや動いている。
気が遠くなりそうなほど鈍い。が次の瞬間、一瞬で相手の攻城ゲージが貯まる
こちらの槍兵が相手の騎兵に重なると同時に城ゲージが割れた。
気づけば店内のベンチに座っていた。
試合は続いているのか続いていないのか
彼にとっては、……もうどうでもいい。
公式の.NETを開く。
今の対戦相手は? 記録は?
だが、そこで妙なことに彼は気づいた。
記録がないのだ。
一つ前の試合の記録が……ない。
今日、4戦プレイしたうちの4戦目の記録。
騎兵を回していたイラつく相手の記録がないのだ。
まだ残っている缶コーヒーに煙草を押し込む。
この試合は?
今、投げたばかりの試合結果を見るとモニターには敗北の文字。
そんなことは、もうどうでもいい。
公式の.NETは?
更新を待ちながらもう一度開くがやはり記録がない。
4戦目の記録どころか5戦目。
今投げた試合の記録もない。
何だこれは? 何が起きている。
新しい煙草と缶コーヒーを手に。
しばし、落ち着くと。彼は表示されない相手の記録を。
対戦相手を思いだそうとするが、なかなか出てこない。
ついさっき戦ったばかりの相手のことが思い出せず。
彼はイライラする。
記憶しているのは29連勝という数字。
いや、その前の試合で14連勝という数字を見た記憶がある。
「……おかしいだろ」
マッチングは続けてだ。その間に連勝数が増えたりするのか?
自分の記憶がおかしいのか。
他に覚えていること。
そうだ。相手のいる県。S県。確か店名は、店名は。
自分の記憶にすがるように検索をかけた
後で公式に苦情のメールを送ろうと考えながら検索結果を待つ。
表示された画面には……。
「嘘だろ」
対戦相手がいるであろうS県のショッピングモール内の店舗。
廃墟と化したショッピングモールの写真が眼前にあった。
大戦の新シリーズが稼働する前に潰れていたらしく。
半端に解体工事が進んで途中で休止しているらしかった。
そもそも普段からプレイ中。
モニターの向こう側のプレイヤーの存在を証明する方法がない。
相手が配信でもしていればわかる。記録が残るからだ。
相手の声、操作している手元の様子。何より自分の君主名も表示される。
だが、こうして記録が残らなければ……。
本当に向こう側に人がいたのかも分からない。
判断材料は大体が勝率、デッキ。サブカなのか、復帰組なのか。
とにかくモニターに表示される情報のみ。
こちらが勝手にそうだと判断してモニターの向こう側の「人間」を想像する。
だが、このモニター表示された情報だってあてにならないのかもしれない。
もしランダムで君主名も店舗も勝率も、それどころかデッキすらも作られ表示さ
れているだけだとしたら。
そして、それらを動かす「もの」も人間とは限らない。
だとしたら何を持って「人間」が操作していると信じればいいのか。
彼は錆びついたベンチから立ち上がると
無造作に缶コーヒーと煙草を荒れた床へと投げ捨てた。
壊れた空調、自販機、蛍光灯、クーラー……。
全ての音と光を失っているゲーセンの店内は仄かに蒼く。
薄暗かった。
いつから自分がここにいたのかもわからない。
S県のショッピングモール内にあるゲーセン。
雨宿りのためにここへ来たのか、大戦が目的で来たのか。
相手を探しに来たのか。
それとも自分を探しに来たのか。
生前の記憶を思い出せないまま。
彼は暗い雨の降りしきる外へと戻っていった。
いかがだったでしょうか?
季節的にホラー寄りに書いてみましたが、あまり怖くないですなw
自分が思っている疑問。
モニターの向こう側に対戦相手がいるのかということです。
ホラーよりもSFっぽい疑問かも。
対戦。対人戦。
ゲーセンだと格闘ゲームを自分は連想をします。
要するに目の前にきちんと触れることができる人がいて、この人と戦っているの
だという保証というか。
変な話ですが。
大戦でも公式の大会とか。会場で目の当たりにすると、ああ、ちゃんと人がいて
目の前で戦っている。という興奮と同時に安堵感もあったりします。
多分、相手との距離感なのだと思います。
昨今は特にモニター越しに楽しむゲームが家でもゲーセンでも増えてきていてい
ます。特に家でのゲーム。現状が現状ですから、ますます増えそうな感じです。
遠くにいる相手とも気軽に協力してゲームができたり、対戦出来たりとゲームを
共有する距離が近づいた一方で。
果たしていま一緒にゲームをしている人は人間なのか? 疑似体験をしているだ
けなのではないのか?と。
ゲームをする人との関係を創作物として考えたりすると楽しかったりします。
それだけ自分が暇なのでしょうなw
ということで3回にかけて投稿200回記念の投稿を書いてみました。
また投稿300回行ったら記念で何か書いてみようと思います。
では今回はここまで。
再見
ゼロ年代の伝奇小説っぽい文体ですね。
大戦だと相手武将の動きとかで人の存在を感じることができますが、麻雀とかをオンラインでやると実はNPCを相手にしてるんじゃないかと思うときがありますね。
なんと言うか渋い文章ですね(*´ω`*)
フランツ・カフカのような文学性のある文章でとても読みごたえがありました。
モニターの向こうに人間がいる・・・信じるか信じないかは・・・あなた次第です(´・ω・`)
ASHさんコメントありがとうございます。
ゼロ年代。伝奇小説。新本格とかありましたな。
懐かしい感じです。オンラインだと麻雀はわかりずらそうですな。
七歩之才さんコメントありがとうございます。
カフカは『変身』が不条理で印象深いですな。
都市伝説な終わり方ですなw この季節にぴったりですな。
>>この小説はフィクションです。
最初、この文を読んでなくて体験談なのかと思ってしまいましたw さすがにこれが楊狐さんなわけないかw
勝った時・負けた時、モニターの向こう側ではどんな光景が広がっているのかとか気になる時があります。
Chaosさんコメントありがとうございます。
流石に実体験ではないです🐘
普段、あまり対戦相手のことは気にしないですからなぁ。あくまで想像するしかないですな。