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三国志大戦とわたくし。

by
ふぐりおじさん
ふぐりおじさん
 合縁奇縁。
つくづく人生とは不思議なものだと、ある程度の年齢を経た今になってそう思うようになった。
あの時、アレをこうしていなければ、とか、もっとこうしていれば違っていたのかも、等と昔を振り返ることが増えた気もする。
後悔とはまた違う、寂しいような懐かしいような苦味の強い感覚、そうたぶんこいつが「感傷」というものなのだろう。

 そんな感傷に浸るたびに、一緒に浮かび上がってくるのは『三国志大戦』の記憶だ。
気が付けば、いつの間にやら私の生活には常に大戦シリーズが寄り添うようになっていた。
カードゲーム自体に興味のなかった自分が、いかにして我が身を大戦沼に浸すようにになったのか。
桃園でキャンペーンが開催されるこの期を利用して、改めて思い返してみたいと考えた次第である。

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 某年某月、縁あって私は株式会社セガに勤めはじめた。
当時、私の勤務する部署は大鳥居にある本社(現在は移転済み)ではなく、秋葉原にある雑居ビルの一角に存在していた。
駅から出てメイド喫茶の呼び込みや中国人ツアー客たちの間を通り抜け、大通りを進む。
横断歩道を渡り、ビジネスセンター前の広場を素通りし、裏道に入って少しばかり歩いた場所に職場はあった。

 そこでしていた仕事の内容についてはあまり触れない。
その他大勢のひとりとしてゲームにクレジットされるような、そういった類の仕事だ。
難しく、同時にやりがいもあり、個性的な同僚たちに囲まれて、この上なく愉快な職場であったということだけ記しておく。

 そして、そこで私は三国志大戦と出逢った。出逢ってしまった。
事の切っ掛けは職場の先輩であり後に友人ともなる同僚たちからの誘いだった。

「三国志大戦知ってる?めっちゃ面白いよ」
「カードめっちゃダブってるからタダで好きなのあげるよ。どれがいい?」
「なるほどね。んじゃはい持って行って!(呉のカードをほぼ一勢力分渡してくる)」
「ゲーセン行こうゲーセン。お金入れて、カードを置いて、はいよーいスタート!」

 R孫策(3コス/10/5/雄飛)のイラストが格好いいな、という軽い気持ちでした発言から、沼に引きずり込まれるまでほんの数日。
そして運がいいのか悪いのか、なんせ職場は天下の秋葉原である。
ゲームセンターがある、カードショップがある、終わったあとに駄弁る飲食店まである。
当時のverは3の末期で、ほどなくWAR BEGINSに繰り上がったが、その頃には私もすっかり大戦界の住人となっていた。
(雄飛魂継ぎ→文鴬快進撃とシフトしていき、最終位は司空で終わったと思う)


 カードの扱いも部隊の動かし方も、まったくお話にならないド素人ではあったが、それでも楽しかったのは仲間たちのおかげだった。
教え合い、競い合い、大声で笑って、肩を並べてゲーセンへ通ったあの時の感覚はまるで学生時代に戻ったようだった。
むしろ年齢なんか関係なく、ただただ『三国志大戦』を通じて、一緒に遊ぶのが楽しかっただけなのかもしれないけれど。

 やがて三国志大戦はver3.594をもって休眠状態に入ったが、その魂を引き継いで出てきたのが『戦国大戦』だった。
最初は「戦国時代かァ」「よく知らないし微妙かなー」等と話していた仲間たちも、流れるようにどっぷりとハマっていった。
演出や3Dモデルの進化、超絶強化や号令で変化するBGMに魅了され、手にした給料をセガに還元する日々が続いた。

 その間にも月日が流れ、やがて私は諸般の事情で東京を離れることになってしまった。
奇しくもセガの部署再編・統合の時期にあたったため、それに乗っかって退職することにしたのである。
同時に仲間たちもそれぞれの道を歩み始めていた。

 送別の対戦会が開かれ、我々は思い切り遊んで、酒を飲んで騒ぎ、最後まで笑って別れた。
その後、何度かは上京して年に一、二度は顔を合わせて遊んだりしていたのだが、それも徐々に無くなっていった。
『戦国大戦』が終わり『三国志大戦4』が稼働したが、いまやみんながプレイしているかどうかもわからない。

 私はといえば、相変わらず『三国志大戦』をプレイしている。
もしかすると対戦相手にあの頃の仲間たちがひょっこり顔を出すかも知れないと思いながら。

 縁を紡いでくれた『三国志大戦』に心の中で感謝しながら、私の足は今日もゲームセンターに向いてしまうのだった。
作成日時:2020/06/01 01:11
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