ゲームも進化した今、各キャラクターにCVがついているのも当然になった昨今ですが、皆さんは三国志大戦のどんなCVがお好きでしょうか?
劉備などに代表される若々しいハツラツとした青年君主。
孫策のようなバイタリティ溢れる血気盛んな武将。
黄忠のような老いてもなお強さをみせる老将。
張勲のように初見だと吹き出すこと間違いなしの全力笑かしネタ武将。
孫尚香などに代表される男勝りの元気な女性武将。
張春華のような冷静かつ大胆な根回しで生き抜く女策士。
三国志大戦にはこのように様々なキャラクタータイプが存在しますが、私が特に気に入っているのが「軍師・策士タイプ」です。
郭嘉・法正・陸孫などに代表される腹に逸物抱えながらも野心はひけらかさず冷静に戦を見通すタイプが好きです。
この中でも特に素晴らしいなと思うのはこれらの武将の台詞が「低音のみ」で構成されている場合。
実はこれ、物凄く難しいことなんです!
自分は仕事柄発声や発音に関しては人よりうるさいのですが、今回はそんな自分が見る「低音声優の苦労」を書いていきたいと思います。
題して『低音声優は辛いよ…』
①ゲーセン環境が『辛いよ…』
突然ですが、皆さんこんな場面を想像してみて下さい。
「ゲーセンで知り合いと待ち合わせ、自分が到着すると相手はもう着いてるようです。
呼び掛けてみたものの相手はスマホ見てるし、周りの雑音で全く声が届いてないようです。」
さて、もう一度貴方が呼び掛けてみたとき、貴方の声はどうなっているでしょうか?
…どうでしょう、声が「大きく」なったと同時に「高く」なりませんでしたか?
そう、自分が普段使う声域より高い音程を聞くと、人間はその声がとても「良く聞こえる」のです。
キンキン高い女性の声がうるさく聞こえたり、赤ちゃんや子どもに親が話しかけるときに声が高くなったりするのは、こうした人間の性質が知らないうちに作用しているからなのです。
逆を言うと、人間の出す「低音」は騒音の中ではとても聞き取りづらい音程なのです。
このため「低音」の台詞を作るためには幾つか工夫が必要になります。
②「聞こえる低音」が出せる声優が少なくて『辛いよ…』
聞こえるための工夫のひとつは、
「低くても良く通り、聞き取りやすい発音ができる声優さんを選ぶ」
ことです。
当たり前じゃんと思うかも知れませんが、これが根本にしてとても大変なんです(´-ω-`)
例えば、新SR董卓(英傑号令)の号令台詞
『髑髏を踏み越え、自が生を勝ち取れい』
を、あの音程で真似して出してみてください。
殆んどの人はやっと声で出せる程度でしか出せないと思います。
これは才能なので、トレーニングでは限界があります。完璧にできるためには生まれ直すしかありません。
更にそれをゲーセンの雑音の中で通すわけです、低くても良く聞こえる声質を持っている人は多くありません。
これだけ生まれ持った才能を持ち、その上演技もできる方を探すことはとても大変です。
加えて、声優さんを取り巻く最近の環境は、低音の声優さんを生み出す環境としては良くありません。
低音声優は基本的に闇があったり悪役だったりする役柄で採用されますが、基本的にこれは演技力や経験が必要なので新人はなかなか任されないポジションであり、世代交代の回転の悪い世界です。
経験ある=ギャラも高いてのもあるしね。
そうした事情もあり、低音武将台詞はゲーム制作側としても用意するのが面倒なものなのです。
③話す時間が短くて『辛いよ…』
またまたイマジネーションの時間。
映画・ドラマ・アニメ・ゲーム(家庭用ゲームのRPGみたいに時間に制約の無いジャンル)のキャラを一人思い描いてみて下さい。
好きな台詞とかあったら尚良し、喋ってるところを想像してみて下さい。
…どうでしょう、「ゆっくり」「間を取りながら」喋ることで、そのキャラの迫力とか怖さとか得体の知れない雰囲気を表現してませんか?
そう、こうしたキャラってゆっくり喋ってなんぼなんです。
間を取りながらじっくり相手とやり取りすることで相手を自分のペースに引き摺りこむことで場を支配する話し方なので、時間が必要なのです。
早口なんてしようもんなら一気に迫力が失われるので絶対厳禁。
しかし、三国志大戦で与えられた時間は全ての武将が一律です。
10秒もない時間をフルに使い、早口に聞こえないように台詞のタイミングをバラしながら演技まですることが必要になるのです。
④一旦上げた声域が下げられなくて『辛いよ…』
台詞というのは、基本的に強調すべき(アクセントをつけるべき)場所が幾つかあるので、声優さんはその場所で声を「強く」「高く」発音します。
例えば、「喋り終わる前に味方が死ぬ」と言われた名(迷)台詞、横山桃園劉備の
『我は天に誓う。我ら生まれた日は違えども、死す時は同じ日、同じ時を誓わん!』
を見てみましょう。
この台詞で強調すべきは「生まれた」「日は違えども」「死す」「同じ日、同じ時」となります。
劉備は青年キャラで、声域が高くなったりしても力がこもってていいなという風に聞こえるので、
「生まれた」で声域を上げ、「違えども」で、少し下げつつ間を取り、「死す」で声域を上げ、「同じ時」で更に上げています。
↑↓↑↑で、最終的には二段階声のトーンが上がる訳です。
人間は力が籠ると声が高くなったり大きくなったりするので、普通の武将台詞ならここはあまり気にされないのですが、お察しの通り「低音武将」にとってこれは死活問題。
テンションが上がって声が裏返る郭嘉、テンパって早口になった法正は三国志の中ではあってはいけないのです。
彼らの声は常に低く、語気が強まるのは本当に必要な必殺の一瞬のみ。
短い台詞とはいえ、台詞のアクセントは沢山あります。
アクセントをつけないと、音程も一緒でノッペリした感情の籠らない台詞になり、つけすぎるとテンションが上がりすぎて冷静な印象を欠く仕上がりになってしまう…。
このさじ加減をいかにするか、難しいところであると共に声優さんの腕の見せ所です。
補足
今回は声優さんに目を向けましたが、台詞担当やSE担当、音響監督もこうしたことを理解して仕事をする必要があります。
チームでお互いを理解することではじめてよい台詞が生まれるのです。
如何だったでしょうか、毎回ですが長くてすみません。
低音武将は基本的に根暗っぽいので人気になりづらいですが、意外と苦労が多かったのがお分かりいただけたでしょうか。
「こんなん考えながら録音すんのかー」とか思いながら計略台詞とか聞いていただけると、貴方の三国志大戦の見方も変わる…かも?
大戦始めたての頃、しもがまちあきさんが演じた楊氏や呉夫人が
低めのほんとに落ち着いた感じの声で凄い良いなと感じたのも
苦労あってのものなのかとこの投稿を読んでしみじみ思わされました。
こういう楽しみもあるから大戦は辞められない感じですね。
>不屈のパッチさん
最近だと羊キユの声優さんとかは落ち着いた台詞運びをされますが、たしかにしもがまさんは最近お見かけしませんね。
女性武将は昨今の大戦では全線に出てぶん殴る役回りなので、後衛で粛々と、という設定も減りつつあるかもしれません。
緒方恵美さんもベテランのベテランですからねぇ。大戦で演じているのが
R文鴦
R羊徽瑜
R董白(2コスト)
C雷薄
という。
こんな複雑な演じ分け要求されてる人他にいたでしょうか?w
>指鹿為馬はよさん
アニメやゲームの世界は声域がリアルより高い関係で、女性の声優さんは子ども・青年・女性と使い分けができますからね。
どちらかと言うとそっちの方が制作側はギャラと手間が安上がりだから重宝されるのです。昔のアニメだと良くある話ですね。