愛する女が俺の子を身籠った。
本当にありがたいことだ。
だが期待と喜び以上に、俺は怯えていた。
俺は父親が嫌いだった。
酒を飲んでは、母に暴力を振るう父を憎んでいた。
そんな男の血が俺には流れている。
自らの子が誕生しようというのに、俺には父になる自信が無い。
自分が怖い。
そんな時だった。
山越賊が街を荒らしていると聞いたのは。
程普、
韓当、
黄蓋と共に現場に向かう。
俺は治安を守る役人をしている。
海賊退治で名を馳せたが、一歩間違えば俺自身が海賊に為りかねなかった。
ただ胸に秘めた思いが俺を律していた。
居た。賊徒だ。
渙発入れず刃を振るう。
気性が荒いのは父親譲りなのかもしれない。
ただそれを正義の為に使うことで、あの男とは違うと思いたかったのだ。
手強い相手だった。
どこか俺を推し測っているようにも感じる。
面白い!この
孫文台を試そうというのか!
「待ってくれ!勘違いだ」
制止が入る。
男たちは山越賊ではなかった。
俺と剣を合わせた男が、既に賊を打ち倒していたのだ。
男の名は
祖茂といった。
付き添いの男が
波才だ。
非礼を詫びる我等に対し、
祖茂は自ら望んで手合わせした事を告げる。
だが
波才が口を挟んだ。
「いや、誠意が足りないね
酒だ!酒を奢りやがれ!」
……
どうやら飲み過ぎてしまったらしい。
気づけば
波才が酷く畏縮していた。
酒癖が悪いのも父親譲りと言うことか…。
生れる子にも酒に溺れぬよう伝えねばな…。
しかし、今とても清々しい気分だ。
酔った勢いで言ったが「この世の父になる」というのは本音だ。
俺は皆が幸せに生きる世の中を作りたい。
一人夜風に当り物思いに更けていると
波才が声を掛けてきた。
「あ、あのよ…」
渋々口を濁しているが、俺に伝えたい事があるのだろう。
悪者ぶっているが、根は優しい男だ。
俺にはそれが分かる。
波才が告げたのは自分が
黄巾党の人間だという事だった。
その
黄巾党が暴走しようとしている。
金と権力に溺れて変わってしまったと。
いずれ俺たちと戦う日も来てしまうだろうと…。
「孫堅…俺に気合を入れてくれねえか?
酒の席での説教…俺の心にずしんと響いたんだ。
俺は…太平道が好きだ。
だから俺は太平道の父親になる!
間違った道に進んだら、それを間違いだってきちんと道を正せる人間になる。
…だから孫堅!
俺にお前の度胸をわけてくれ!」
お互いボロボロになるまで殴りあった。
その拳に想いをこめて。
俺も
波才の熱い想いを感じた。
別れ際満足そうに笑うが、何処か寂しげだった顔が忘れられない。
………
それから九年の時が流れた。
黄巾党の反乱は現実の物となった。
我等は同郷の
朱儁将軍の援軍として
黄巾賊と対峙する事になる。
その中には
波才の姿もあった。
波才の軍は士気も高く
朱儁将軍も苦戦していたが、兵糧不足等の事情により次第に追い詰められた。
劉備という男の伝言で、砦を襲った
波才軍は
皇甫嵩将軍の仕掛けた罠に嵌まり、火計により壊滅した事を知る。
そして告げられる。
波才が俺と一騎討ちするために待っていると。
森を抜けると懐かしいあの男が居た。
満身創痍な様子が見てとれたが、精悍で力強い眼差しだ。
「孫堅…俺は後悔なく死にたいんだ。
あんたと出会って九年間。俺はひたすら戦ってきた。自分の信じる太平道を取り戻すために…
結局、太平道は、こうして戦いの道を選んじまった。
だが九年前…あんたが俺に言ったように、俺は俺なりに熱く生きてきた。
見届けてくれ…俺の生き様を!」
あの頃と同じ、いやそれより遥かに熱い想いを感じた。
しかし疲労の色は強い。
必死に抗っているが、息も絶え絶えだ。
「まだだ…俺の九年間がこの程度で終わるはずねぇだろ!?」
波才の鋭い刃が肩口を抉った。
「刻み付けてやる!絶対に刻み付けてやるぜ!
俺がこの時代に生きた事を忘れられないように!
生き様を刻み付けてやる!!」
俺の胸も激しく高揚し熱くなる。
強く生きている事を全身で感じる。
一瞬、この時間が永遠に続く事を望んだ。
だが、それは終わりが来るものなのだ。
波才自身がそれを一番分かっている。
胸に刃を突き立てた時、
波才がうっすら笑ったように感じた。
刻んだぞ。我が友
波才。
お前の生き様決して忘れない。忘れるものか!
(さんぽけ呉伝1章~2章より抜粋編集)
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3月28日(木)に
さんぽけ終わりますね…。
当初「どうせ女武将贔屓なんだろ?」と全く期待してなかったシナリオ。
上記の
波才が活躍する辺りから、名シナリオと思うようになりました。
三国伝~北伐編~とか
武将列伝に出てくる
魏延とかも恰好良いです。
あと4日間になってしまいましたが、
さんぽけ最期までやりきりたいな!
さんぽけがこの時代に生きた事を忘れられないように!
生き様を刻み付けてやる!!
一覧で冒頭だけ読んで「まさかうさ阿斗誕生か!?」と早とちりした私のドキドキを返していただきたい($◇$` )
自分も白帝城守備隊さんに続いておめでたか!Σ(゚◇゚;)
って、びっくりドキドキしたので返していただきたい。(o゚Д゚ノ)ノ
私も冒頭読んで『( ゚Д゚)⁉️どういうこと?』ってなったのでドキドキを返してください( ´∀`)
( ˙ ∞ ˙ )不倫まる
スゲー面白そう
今からさんぼけやろうかな?
おめでとうございます!って違うのですか( ̄▽ ̄;)
ドキが胸々したトキメキを返してくださいw
お祝いに桃の苗木を贈らなきゃ(使命感
さんぼけろくにしてないから最初の文章で思わずおめでとうって思ってしまいましたやん!
あ、うちは無事長男産まれましたよ
波才のシナリオは感動でした。あれだけ波才に力を入れたものは無いですよね(・∀・)
孫堅の最期のところも是非見て欲しい…!
さんぽけのシナリオはこういう見方もあるみたいな構成になっているので引き込まれます。
さんぽけ魏延のイラストは個人的にかなりお気に入りなので、列伝の格好良さと相まって◎。
>しろからすさん
一覧見て俺も「勘違いされるな。コレは」と思いました( ˙∞˙ )
>ジェイムズ9さん
白帝城守備隊さんの報告俺も嬉しかったです(o´∞`o)
え?勘違いの責任?知らんがな( ˙∞˙ )←
>愛した女
俺のやる事は全てうさ孔明に見抜かれてるので( ˙∞˙ )
自分も騙されましたよ。
亮くんに続いておめでたかと!
うさ孔明さんじゃなくて、側室が懐妊ですかね。
>プイニュ。さん
( ˙∞˙ )風燐まる?
>虚実さん
え!今から始めるんですか!?
しかし虚実さんのコメント読んで声が出るほど嬉しかったです!(他の人が冒頭ネタしか触れないのもありましたがw)
さんぽけのシナリオ大好きです!
呉伝1章~2章なら簡単にクリア出来ると思います。
是非!
>眠り姫さん
違います( ˙∞˙ )
トキがメキメキ(北斗有情拳)
>ジャスタさん
鹿柵用意しときます(焦燥感
>パパチャンさん
さんぽけ名シナリオですよ
あ!ご長男誕生おめでとうございます!!
>からあげ定食さん
俺も波才のシナリオ感動しました。当初ギャグ要員だと思った波才の生き様に男泣きしました( ;∞; )
>Chaosさん
さんぽけシナリオ良いですよね!
独自性のある解釈も三国志の世界を広げていて好きです。
さんぽけ魏延のイラスト俺も大好きです!
「趙氏が強い」「馬承が強い」言われても俺にとって不動のエースです。
>ヤンさん
騙すつもりは無いのだが…?
亮さんめでたいですね!
側室?そんなものはない!
冒頭で「おめでたっ!?( ☆∀☆)」となり、重い独白に心配しつつも「どっかで読んだな…(-""-;)」からの、四天王の名前で『さんぽけだコレッ!Σ(´□`;)』と感情を揺さぶられた所に「熱い漢、波才(ToT)」
見事にうさまるさんの手のひらで踊りきりましたw
キャラ改変という謂われも付くかもしれませんが、これだけ格好良く波才を描いたさんぽけシナリオは高く評価したいです。
>お孫様
冒頭の一文で勘違いした人が多かったみたいですね( ˙∞˙ ;)
さんぽけ波才熱いですね!
踊れ!俺と共にw
>おかか容疑者さん
三国志自体が正史や演義があるくらいですからね。ありだと思います。
そもそも演義には波才出てこないしwww
さんぽけシナリオ良いですよね!
おめでただとおもったらさんぽけでワロチw
たまにこの話みたいに熱いシナリオがあるのでなかなか侮れないですよね
>レイブンさん
予想以上に勘違いする人が多いですねw
>土方竜さん
さんぽけのシナリオ本当に好きでした
もう見れないのが残念です…