頬を優しく撫でられる感触で目が覚めた。
「やっと起きたか」
そうか、僕はあれから寝てしまっていたのか。
しかし、昨晩泣き疲れて寝てしまったのは張苞の方だろうに。
……無理もない。
我が父、関羽の弔い合戦に親子で先陣を切るはずが、戦準備の間にまさか張飛殿が暗殺されるとは…。
親同士が義兄弟と言う事もあって、家族ぐるみでの長い付き合いの張苞が、
自分の前であんなに泣き崩したのは勿論初めてだった。
それをそっと抱え寄せ、二人で共に床へ安らいだ。
不思議なもので、我が父の死を知ったあの夜も、まるで昨夜の鏡写しの様に、僕を支えてくれたのは張苞だった。
「こんな形で形見分けを受けるとはな」
張苞がかざすのは蛇矛、言うまでもない張飛殿の得物だ。
空を切る素振りからは、昨日の落胆も悲壮もない。
「すっかり立ち直ったみたいだな」
「しこりがねえと言やあウソになる。
でもよ、俺たちが見るのは後ろじゃあねえだろ」
僕よりひとつ歳上だからか、張苞はけして弱気を見せない。
そこがいつも頼もしく、そして危うい。
「なあ、苞。君の強さはよく知っている。
だけど、決して無理はしないでくれ」
「あ? ありきたりな話なら無用だぜ。
俺が無理強いして死ぬかよ」
張苞の強さは若くとも芯が通っていて、すぐに頭角を現すだろう。
しかし、我が父二人は、強くとも天命儚く散ることとなった。
彼とてどのような悲運に見舞われるか。
「なあ、苞。今後は僕が君の背中を追うよ」
「はあ? 先駆けする俺の後をつけてくるのか?」
「ああ、此度の一件で我が国は魏だけでなく、呉とも交戦状態。戦の数も増えるだろう。
一人よりも二身一体で動く方が確実だ」
「じゃあよ、ガキの頃の俺とお前そのものじゃねえかよ」
そうか。
言わば幼き時の誓い、それは父たちの桃園結義と等しいものなのかもしれない。
安心して大きな背中を見せる張苞に後ろから抱きかかり、僕は伝えた。
Si 俺たちはいつで~も~♪ 二人でひとつ~だった
地元じゃ負け知らず~♪ そうだろ
やっと見つけた…………
親父の仇ッ!
ー完ー
長きにわたる御愛読ありがとうございました
四天王FAL先生の次回作にご期待ください。
わーい!!
次回の新刊100冊予約しました(*´ω`*)(*´ω`*)(*´ω`*)