たのしいえんけ6

袁煕｢はあ………｣

袁譚｢どうしたんだ、浮かない顔して｣

袁尚｢せっかく我々、晴れて更に強くなったというのに｣

袁煕｢あ、ううん。それはそれで嬉しいけど……｣

袁譚｢まあ、だからといって使われるわけでもないんだがな｣

袁尚｢悲しくなるからやめよう。
　　…煕兄が沈んでいる理由、なんとなくは察しているぞ｣

袁煕｢……え？｣

袁譚｢お前の嫁……。
　　甄洛さん、帰ってきてないもんな｣

袁尚｢袁紹軍でようやく1コスト弓兵の女性ＳＲが登場！
　　とまで来て、まさかの馬倫さんだったからな。
　　ヘコむ気持ちは私も分かるつもりだ｣

袁煕｢…二人には分かってたか。
　　馬倫さんが来てくれたのはもちろん歓迎したいけど、やっぱり甄の事は気掛かりなんだ。
　　今頃どうしているのかな、って｣

袁譚｢ちくしょうめ、これだからリア充は｣

袁尚｢だが、そんな煕兄にビッグニュースを持ってきたぞ｣

袁煕｢ビッグニュース……？｣




袁煕｢…………甄が、ライブ？？｣

袁譚｢まあ、このチラシを見るに、そう書いてあるんだよな｣

袁尚｢こっちにいた時は比較的慎ましやかな女性だったと思うが｣

袁煕｢どういう事だろう……｣

袁尚｢気になるだろう？｣

袁譚｢…煕、俺達と一緒にこっそり見に行ってみないか？｣

袁煕｢え！？｣

袁尚｢魏から連れ戻すのは難しいにせよ、甄洛さんの元気な姿が見られれば、煕兄も心がスッキリするだろうと思うのだ｣

袁譚｢イベントで人ごみに紛れて行けば危険なこともないだろうしな。
　　……あ、父上には内緒でな。護衛をぞろぞろ付けられて、お忍びどころの話じゃなくなるだろうから｣

袁煕｢で、でも、いいのかな…？｣

袁尚｢なに、儒教の教えでは『長子相続』。
　　何か問題があったら、責任は譚兄がすべて継いでくれるだろう｣

袁譚｢何で俺だけ貧乏くじ引くんだよ！？
　　責任は皆で連帯だからな！連帯責任！｣

袁煕｢ははは…。
　　でも、二人ともそう言ってくれるなら、僕も行ってみたいな。甄の姿を見るために｣

袁尚｢ふっ、決まりだな。
　　イベントは明日だ。この話は絶対誰にも漏らさないようにしよう｣

袁譚｢ああ。
　　あと、何かしら変装用の道具を探しておくか。念のためにな｣






翌日






袁煕｢結構歩いたけど、やっと着いたね。
　　この場所に甄が来るのか……｣

袁尚｢かなりの来場者だな。中華各地から集まってきているとみえるぞ。
　　………しかし、譚兄よ｣

袁譚｢おう｣

袁尚｢よりによって変装道具がなぜ鼻メガネなの！？｣

袁譚｢それらしいものがこれしかなかったからな。
　　ま、パーティーみたいで楽しいだろ。しかしお前、似合うなあ…クク…｣

袁尚｢だ、誰のせいでこれをかけていると……！｣

袁煕(ふふ…。
　　譚兄さんと尚、仲がいいのか悪いのか……)
　　


　　(しかし、気のせいかな？周りの人たち、心なしか1コストの人がやたらと多いような……)




袁譚｢…お？　ステージの幕が開いたぞ！｣








甄洛｢皆さーん！！
　　今回も私の『胸キュン♡悲哀DANCE』を見に来てくれて、ありがとー！！｣


会場｢ウオオオオオオオーーーーッ！！！！｣








袁譚｢…………｣


袁尚｢…………………え｣



袁煕｢………………………これ……甄……？｣






甄洛｢今日も皆さんのために、精一杯、踊りまーす！
　　頑張って最後までついてきてくださいねー！！｣

楽進｢おお……姫ぇぇぇ！
　　此度も最後まで、お供しますぞぉ！！｣

関平｢毎度ながら、なんて美しく、悲しい舞なんだ……
　　うおおおおおおお！！｣





袁煕｢な、何か、すごい盛り上がってるね…｣

袁譚｢常連さんかな？｣

袁尚｢親衛隊と呼んだ方が適切かもしれないな、あれ…｣






趙累｢ひ、姫様！もう我慢できませぬ！
　　私の忠義、受け取ってくだされぇぇ！！ぐはっ！！｣

李通｢ああっ！趙累どのが計略を！！｣


甄洛｢ああ、趙累さん！そんな、私のために撤退を………
　　悲しい、悲しいわぁ！！｣







李典｢姫様の憂いの表情！
　　ああ、たまりませんな…！｣

周倉｢姫様！
　　悲しい顔をさせるヤツは、俺っちがぶっとばしてやるッス！！｣

会場｢ウオオオオオオオーーーーッ！！！！｣







袁譚｢めちゃくちゃ士気高いな、おい｣

袁尚｢ていうか自分から撤退していっただろ、あのおっさん｣








曹昂｢だ、ダメだ！僕も抑えきれない…！
　　姫、私を馬に！！がはっ！！｣

甄洛｢ああ、曹昂さんまで！いけないわ、そんなこと………！
　　悲しい、悲しいわぁ！！｣


張梁｢若いの、無茶しやがって……！
　　黄巾党が貴女の悲しみを救ってみせるぞ、姫ぇぇぇぇ！！｣




会場｢ウオオオオオオオーーーーッ！！！！｣




袁譚｢なんだこのイベント｣

袁尚｢どこからツッコめばいいか分からなくなってきた｣

袁譚｢そういえば、煕は？｣


袁煕｢うーん……｣


袁尚｢嫁さんのあまりの変貌ぶりに気絶してしまったようだ｣

袁譚｢仕方ない、二人で運んで帰るか｣

袁尚｢帰ったら冀州団子おごってもらおう｣

袁譚｢俺は冀州せんべいにしよう。
　　とりあえず、煕が起きたら今回の件は夢だったと話しておこうか｣

袁尚｢ああ。知らない方がいいことだってある。
　　『袁家の姫様』はいつ帰ってこられるのかな。ほら、どいたどいた｣




甄洛｢ああ、顔がよく見えませんが、後ろの方にも失神した方が…。
　　悲しい、悲しいわぁ！！｣


会場｢ウオオオオオオオーーーーッ！！！！｣