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塗将に徹し、己が都合の良いときに攻城を取れば良いのだ

by
楊狐
楊狐
この投稿はフィクションにて候。


 ……楊狐庵。狐の間。

 狐の間には、ふたりの人物がいた。
 ひとりは銀髪の精悍な青年。もうひとりは薄紫色の短髪に思慮深そうな小柄な少女。
 青年は背筋正しく正座し、少女は大の字となり天井を見上げていた。
「……君主の調子は良いようですよ」
 少女は、諸葛鈴は天井を見上げながらつぶやいた。
「具体的にどのように」
 青年、関興は一抹の不安を抱きながら言及する。
「先月、七月の魏限定大会より連敗が続き、一気に君主は品をさげました」
 静かに諸葛鈴は答えた。
「それはもう本当に三品下まで上がったことがあるのかといううほどに酷いもので、
今デッキを見返しても構成がひどすぎる。こんなデッキで勝てる人間がいるとすれば、
もっと上の品の人間くらいです。それなのに君主には勝てるという過信があった」
 のそりと起き上がりながら諸葛鈴は言葉を続ける。
「あまりにも大戦4に慣れすぎて、大戦4本来の根幹である征圧をおろそかにしてしまったのです。
おまけにいつの間にか武力重視、大戦3の感覚で戦っていたことも問題ですし、降格の焦りから普段使い慣れていない
高武力、強計略の武将を登用し、力任せに勝利を掴もうとしてしまったことや降格のストレスからのミスの連発。
それが敗因であり、原因です」
 いつのまにか彼女の瞳には戸惑う関興の( ˘•ω•˘ )が映っていた。
「全く愚かしいことです」
 しばし二人の間に沈黙が訪れる。

「しかし、今回の10コスト大会の朗報で元気を取り戻したらしく。魏の大会以降、
一度も自身の創意した魏のデッキに触れさえしなかったのに、大会に登用したのは夏侯淵(攻撃)殿。
混色とはいえ、魏のデッキに再び触れるくらいに気持ちが回復してきましたし、改めて征圧中心のワラデッキを
創意されるようになった」
 言いながら諸葛鈴はゆるりと部屋を円形に歩き始める。
「さるランカーさんのツイッターに載っていた征圧重視のワラデッキや二人目となる私のカードなどを引いて、
触発されたのでしょう。勝率は低いですが、良い方向に気持ちが傾いています」
 歩き回る諸葛鈴に関興は問う。
「黄忠(兵力・攻攻攻)殿を登用したのも」
「はい、征圧重視のランカーさんの影響でしょうし、環境も黄忠殿に味方しています。ですが、そもそも
黄忠殿は君主が大戦4を初めて二日目に引いた武将。あなたが追加されるまでは2コスの選択肢は
黄忠殿しかいませんでしたからね。使い慣れた武将といえば使い慣れているのです。
もともとカードプールが少ない時から強い甲将に恵まれず、乙将で頑張っていましたから、どちらかというとレアリティ高く
輝かしい甲将よりも、レアリティの低い地味な乙将のほうが君主には合うようですよ」
「それはつまり将棋で例えるならば、」
「その君主の棋風というものでしょう」
 関興の言葉を諸葛鈴が続ける。
「どんなに強い武将でもそれを十全に生かすには君主の力なくしてあり得ませんが、
そもそも君主の棋風に、どんなに強い武将でも合わなければうまくはいきません。
あるランカーさんの言葉を借りるならば、直感的に、その君主の心に『刺さる』武将です」
 諸葛鈴は足を止めると正面から関興を見つめた。
「君主の棋風にあった勢力しかり、デッキしかり、それが号令デッキなのか、ワラデッキなのか、
舞のデッキなのか、枚数の多いデッキなのか少ないデッキなのか、それは君主次第です」
「我が君主の場合は征圧重視のワラデッキということですか?」
「ええ、武力に勝る武将も登用したりはしているようですが、基本はワラデッキ。現在は良い意味で創意中ですがね」
「それで陳姫殿を登用したりしているわけですね」
「そうです。陳姫殿には、端から戦力面では期待していませんから」
 いつの間にか諸葛鈴は、関興と対峙するように腰を下ろしていた。
「しかし、征圧を重視するならば、新武将の宋憲殿でもよいのでは?」
「あの方には魅力がありませんからね」
「確かに、あの貌では」
「……関興殿。私は特技の話をしているのです。宋憲殿の貌の話をしているのではないのですよ」
「こ、これは失礼」
 その後、狐の間から二人の笑い声が上がった。

「そう考えると征圧1の武将はもう必要ないということですね」
 神妙な面持ちで関興は言葉を漏らす。
「そんなことはありません」即答する諸葛鈴。
「計略がひょうげ(おもしろい)ているという理由で征圧0の劉繇を登用したりしてますから、
今は本当にデッキ創意を楽しんでいるようですよ」
「それでは私のような征圧1でも……」
 目を細めながら諸葛鈴は応じる。
「見方を変えれば関興殿の計略もひょうげてますし、昔は強い甲将として登場したものの
現在はセガの人によって弱められて乙将と化した感がまた逆に良いと思いますよ」
 諸葛鈴は関興に、もう心配ないという言わんばかりに優しく微笑んで見せる。
「今後は、ガチの甲デッキを使うほか、好きな武将を登用する乙デッキと併用しながら二本立て、
いや、基本勢力問わずですから四本、五本立てくらいで」
「それでは各勢力のデッキをリレーして使っていた最初の頃に戻ったということですか?」
「そういう見方もできますね」
 諸葛鈴は言葉を続ける。
「ですから征圧を理由に私もあなたも、今後、出番が全くなくなるということはないのです」
「……良かった」
 彼女の言葉を聞き、心底安堵する関興の姿があった。

(秋のバージョンアップには漢軍や象兵が追加されます)
 しかし、その裏で諸葛鈴は憂いていた。
(君主の過去を調べた結果。特に象兵に傾倒していた時期があるとかないとか。その傾倒ぶりはすさまじく
どんなデッキにも必ず象兵をいれていた。……さすがに今回は征圧の関係もあり、ないとは思いますが)
 願わくば自分たちの存在を脅かす、魅力的な象兵が追加されないことを祈る諸葛鈴だった。

 というところで今回のお話はおしまい。
 
今回の投稿は趣向を変えて小説風にしてみました。
まったくひょうげたやつだと一笑していただければ幸いです。

単純に購入した『へうげもの』山田芳裕著に触発されただけですが。
興味のある方は漫画を読んでみるのも一興。 

そでは再見。




 
更新日時:2017/08/22 23:00
(作成日時:2017/08/22 23:00)
コメント( 3 )
プイニュ。
プイニュ。
2017年8月22日 23時10分

アニメしか見たことないですが
デッキをひょうげたものにしていたら、うっかり城が落ちたということでしょうか

楊狐
楊狐
楊狐
2017年8月22日 23時16分

プイニュ。さんコメントありがとうございます。
まさにそうですね。どうも調子に乗っていた感があるので、
もう一度焦らず乙将で地道に行こうかと思います。

楊狐
楊狐
2017年8月22日 23時49分

プルトゥエルブさん。コメントありがとうございます。
木鹿大王も魅力的なんですけどね。自分は兀突骨が大好きでした。
あと活が三つ付いている孟獲。今回はどうなるんでしょうね。楽しみです。

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