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仙人と私(小話)

by
あばよ涙
あばよ涙
この投稿には小話(フィクション)が含まれています。
以下の3点のうち、1つでも引っかかったら戻る推奨です。

①文才がないので読みづらいです。
②誤字・脱字はごめんなさい。
③三国志大戦とは関係ない小ネタが入っています。

が、小話の後に動画へのリンクが貼ってあるので、動画だけ見ていただいても喜びます。


 梅雨の晴れ間の日曜日。空調が効いたファミレスの一角で賑やかな喧騒に包まれながらも、私達の間では静かな
戦いが続いていた。
 事の起こりは、通う学校のある場所から2つ離れた区にあるゲームセンターまでさかのぼる。限られたお小遣いの
中で、週末にだけ楽しんでいる三国志大戦4というアーケードゲーム。なんとなく、プレイしている事をクラスメイト
に知られるのが嫌で、少し遠くのこの場所まで足を運んでいるが、地方都市であるこの市では設置店舗が限られている
のも理由だ。一緒に始めた友人と張り切って全国対戦に出陣した際に、私の操る舞姫が一頭の馬に踏み付けられた。
「やっぱり柵を飛び越えるのは狡い・・・」
 反省会と称し、ゲームセンター近くのファミレスに移動した後、グラスの中の氷をストローで弄りながら私はぼやいた。
「きっと甄氏が可愛いから呂布も張り切ったんだよ」
「奥さんがいるはずだよ?」
「じゃぁ、張り切ったのは赤兎馬の方かな」
 そう言ってトウコは首をかしげる。いつもは結んでいる髪が、週末はストレートだ。耳にかかった髪をそっとかきあげる
仕草を見ながら、私はぼんやりと考える。
 計略を使うと、赤兎馬を制御できずにジャンプさせてしまう呂布。ムービーシーンで拳を地面に叩きつけているのは、
赤兎馬の躾が上手くいかない事に憤っているのかもしれない。少しだけ呂布が可愛く思えてきた。
「ところで、女性武将に向かってジャンプした時は、やっぱり「不二子ちゃ~ん」って言うのかな」
「私は怪盗よりも、美女の依頼しか受けないスイーパーを思いだしちゃった」
 言われてみて思い出した。一流のスイーパーだが、無類の女好き。女好きという共通点はあるが、私のイメージは
怪盗派だ。
「あれは絶対、不二子を襲う時の怪盗がモデルだって」
「伝言板にxyzと書き込むスイーパーに一票。後で奥さんに100tハンマーで殴られたりして」
 私は生来、父親譲りの頑固者だがトウコも負けず劣らずの頑固者だ。大半の人がトウコに抱く印象は、おっとりとしていて、
ふんわりとした性格の草食系女子だが、自分の物差しを持ち、意見をはっきりと言う一面もある。
 ハンマーで殴るのは奥さんではなく相棒だった気がするが・・・。そんなツッコミを思い浮かべながら、「む~」と
私がストローを咥えながら唸ると先に折れたのはトウコだった。
「それよりも反省会。今日は呂布にやられたけど、私達二人とも超絶強化の武将に弱いよね。何か対策を考えようよ」
 その言葉に本来の目的を忘れかけていた私は、思考を切り替える。ワラ見習いの私にとっては、号令で一気に押し
込んでくるタイプも苦手だが、超絶強化中の武将がこちらの部隊を確実に落としてくるのも厄介だ。枚数差を活かして
端攻めに向かわせても、所詮は低コストの城ダメージ。守城部隊を蹴散らされ、頑張って奪ったリードを一気にひっくり
返される展開は心が痛くなる。
「まずは手持ちのカードで対策できそうなカードを探してみますか」
 負け戦から学ぶ事も大切だ。何故自分が負けたのか、試合を振り返ってひとつずつ対策を見つけていく。現実の世界でも
ゲームの世界でも、それは変わらない。
 私の提案で、それぞれが鞄からケースを取り出しカードを探し始めた。決して多いとはいえない資産だが、改めて手持ちの
カードを眺めてみると計略の種類に驚かされる。デッキを組む時は普段から使っているカードばかりに目がいきがちだが、
折角引いたのに使った事のないカードも存在する事に気付く。牛歩の計、相手の移動速度を下げる。火計、相手に炎による
ダメージを与える。
 武力ばかりを重視していた私にとっては、計略を見直す良い機会かもしれない。武力要員のカード、計略要員のカード、
何事もバランスが大切だ。カードの乱れは心の乱れ、そんな事を考えているとトウコから声が上がった。
「このカード面白いかも」
 嬉しそうに眼を輝かせたトウコは、1枚のカードを私の方に差し出してきた。「ありがとう」と礼を言ってカードを受け取った
私は、早速カードを眺めてみる。本体(?)の周りに分身を連れた奇妙な老人だった。
「・・・左慈」
 表面に書かれた仙人の文字。成程、人間離れした風貌のイラストにも納得がいく。裏面を見てみると、300人の分身を出した
というエピソードが紹介されておりユニークだ。
「仙人ってインパクトが凄いね、人ならざる者の力を見せてくれるかも」
「そのカード、イラストも面白いけど計略も面白いよ」
 私が興味を持った事が嬉しいのか、トウコは身を乗り出して続ける。変化の仙術、武力と知力と制圧力が、最も武力の高い敵と
等しくなる。
「計略を使うと相手の最高武力が9だったら、自身も武力9になれるって事だよね」
「最も武力が高いって書いてあるから、そうだと思う。もし相手が超絶強化で武力を上げた時に使えば・・・」
「超武力の左慈仙人の完成!!」
「この計略、士気3で使えるんだ。こんなカードがあったなんて・・・」
「武力だけじゃなく知力と制圧力も変化するから扱いが難しそうだけど、対策になれそうなカードだね」
 もしかしてと思いケースを調べると、しっかりと私も引いていた事に気付いた。1.5コストで武力4は足を引っ張るなぁと
思って、ケースの中で倉庫番をさせていたのかもしれない。なにしろ私のお気に入りの1.5コスト達は同じ歩兵の郭汜を筆頭に、
武力5~6の武闘派ばかりだ。
「儂に倉庫番をさせるとは、お主、見る目がないな」
 左慈仙人にそんな小言を言われたような気がして、思わず苦笑いがこぼれる。
「私は飲み物のおかわりを取ってくるから、左慈入りのデッキを考えてみたら?」
 すでに二人分のグラスを手に持ったトウコが腰を浮かせる。
「トウコの優しさが身に染みるぜ」
「くるしゅうない」
ドリンクバーに向かうその背中に感謝しつつ、私はデッキを考え始めた。


【三国志大戦4】 ワラ好きが仙人と行く 【四品中位】
https://www.youtube.com/watch?v=iVI7mvzVYV0
更新日時:2017/06/27 07:13
(作成日時:2017/06/26 21:47)
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